投票で迷ったら試しにやってみるボートマッチ。もしかしたらマッチじゃなくハックじゃないか?という前稿からアンサー回。
こうやれば回答者と候補者の志向がハッキリしてくるだろうという提案をする。
もったいぶっても仕方ない。さあ、いこう!
さあ、いく前に、ちょっとおさらい。
質問の罠の4タイプ。
- 何を問われているか分からなくなる罠(ダブルバーレル質問型)
- 選択肢の一部に限定して真実を隠す罠(偽りのジレンマ型)
- 大ナタふるって中身を見せず丸投げさせる罠(白紙委任状型)
- 権力者の存在を隠して質問する罠(パワーバランス無視型)
それぞれの罠を超簡単に解説すると以下の通り
ダブルバーレル質問型の例:
Q.消費税率を時限的もしくは恒久的に下げるべきか?
→問題点:時限的に賛成でも恒久的に反対ならどう答えるのが正解か
偽りのジレンマ型
Q.国民負担を増やすことで、子ども支援を拡大させるべきか?
→問題点:国民負担を増やす以外の方法でも子ども支援を拡大できるはず
白紙委任状型
Q.防衛費をGDP比2.0%に増額することに賛成か?
→問題点;増額した防衛費の使途がまったく不明のまま賛否を問われても困る
パワーバランス無視型
Q.意欲ある人の長時間労働を緩和してもよい
→問題点:経営者や上司が意欲の有無を迫ってきたときに長時間労働を蹴れるかどうか
>改善提案:ダブルバーレル質問型
まず設問構造を変えよう。
ダブルバーレル質問型ならば分解して二つの質問にする。
たとえば
Q.消費税率を時限的もしくは恒久的に下げるべきか?
は
「Q.消費税率を時限的に下げるべきか?」
と
「Q.消費税率を恒久的に下げるべきか?」
の2つの質問にする。
>改善提案:偽りのジレンマ型
偽りのジレンマ型ならば複数選択の中から一つを選ばせる。
Q.子ども支援を拡大させるべきか? 拡大を支持するならば、以下の選択肢から選べ
A1.国民負担を増やす
A2.ほかの社会保障サービスを見直す
A3.防衛費のGDP比2.0%への増額を撤回する
A4.別の事業予算を縮小する
A5.かかる事業の事務コストの削減
A6.支持しない
などとする。
>改善提案:白紙委任状型
白紙委任状型も複数選択肢から選ばせるようにする。
Q.防衛費をGDP比2.0%に増額した場合、何に使うべきか以下を選べ
A1.航空戦力の増強
A2.小銃を最新式にただちに更新する
A3.イージス艦を造船
A4.自衛隊の募集宣伝活動の強化
A5.駐屯地ないし基地建物の更新
A6.その他
A7.増額を支持しない
などとする。
>改善提案:パワーバランス無視型
パワーバランス無視型はもうどうしようもない。質問設定自体が壊れてしまうが、それを承知で正直に盛り込むべきだろうか。
Q.意欲ある人の長時間労働を拡大します。意欲の有無は会社側が判断します。あなたに自由意志が問われる可能性は低いですが賛成ですか?
わたしもバカらしいとは思う。でも、この質問の本意はここなんだ。こうやって設問を解きほぐしたら、この手の政策デザインがいかにバカげているか分かるだろう?
以上がストレートに質問設定をつまびらかにした場合の改善策だ。ただ、パワーバランス無視型は論外としても、偽りのジレンマ型や白紙委任状型だと選択肢が多く、択一式ではこぼれ落ちる意志選択が出てしまう。これを解決する手段の一つが一対比較法だ。
>一対比較法による改善提案
一対比較法。複数選択肢を2つの組にしていずれかを選ばせる。全部の組み合わせを順序も含めて繰り返す。そうすることによって回答者の優先順位が鮮明になる。
実際にやってみよう。
Q.子ども支援を拡大させるべきか? 拡大を支持するならば、いずれの選択肢が好ましいと思うか組み合わせのうち一つを選べ。選択肢はA1からA6まであり、拡大を支持しないならばA6を選べ。
A1.国民負担を増やす
A2.ほかの社会保障サービスを見直す
A3.防衛費のGDP比2.0%への増額を撤回する
A4.別の事業予算を縮小する
A5.かかる事業の事務コストの削減
A6.支持しない
そしてA1からA6まで6つの選択肢から2つの組み合わせをすべて回答してもらう。
質問紙法の基本にならえば、前後で回答が異なるパターンもあるので組み合わせでなく順列になる。
それは実に30通りになる。
さらに正確なパターンを導くため、その組み合わせを各3回ずつ回答させる方法もある。
さあ、選択90回だ! これで一層の一致度が見いだせるぞ!!

ああ、わかっている。
こんな選択、だれも最後までやりはしない。
そもそも労力に合わない。
候補者ないし政党はシングルイシューで比較はできない。
たいていの場合、複数政策をつけて打ち出している。
何を争点にするかは政党ないし候補者によって違う。
そこのバランスを見る方が実際の投票選択に近い。
>今すぐ選べる・使えるボートマッチ
これを実現しているのが日経のボートマッチだ。
二つの架空の政党が複数の政策を打ち出してくるので、いずれかの政党に投票するのか選ぶ。
最短で5回、最長で20回。
この回答から一致度を示してくれる。
やっていくほどの完全理想の政党はなくなる。悩ましい選択が続く。
それが実際に政党や候補者を選ぶ苦しみをシミュレーションしているように感じる。
ただ、これも問題がないわけではない。
アルゴリズムの限界のせいなのか、選べるのは自身が重視するとした5つの政策課題のみ。
そしてどういう計算で結果をアウトプットするのか質問紙の技法を知らない人にはまるっきり理解できず、一致度の実感を持てないように思える。
何より問題なのは、自身がどの政策課題に関心が高いのか、実は自分でもよくわかっていない可能性がある点だ。
ここは一対比較法をシステム上で採用してくれると便利だと思う。
あるいは本エントリーでやり方は示したので、気になる読者諸氏は自身で一対比較法を試したうえで日経ボートマッチに臨むのもいいかもしれない。
>ボートマッチの改善提案を超えて
これらボートマッチの改善提案を示したうえで、私自身の感想を述べる。
まず政策に財源をセットで語るのはやめよう。
財源をまるっきり無視で語られても困るのは同意するが、かといって財源を限定して政策を語られても支持選択の袋小路に入っていくだけだ。日本中で政治無関心層が広がっているのに、さらに加速させるようなマネはやめてもらいたい。
次に政党も候補者も政策の優先順位をつけていただきたい。どれもこれも大事だといいたいのかもしれないが、私たちはあなたたち政治家の行動原理を逐一把握しているわけではない。
もっと簡素に言おうか。
政治家よ、もっとシンプルに政策を語れ。
政策実現を目指すなら財源で言い訳するのはやめろ。
最初に予算の増額を示して中身を出さないのもやめろ。
実務上の不利益が出そうなデザインで政策を示すな。
本来はあるはずの選択肢を隠して選ばせるな。
政治が難しいと多くの人たちが口をそろえて言う。
それはボートマッチにも見られたような4つの罠をあなたたちが掲げる政策にも見られるからだ。
正直、わからない。わざとか? わざと難しくして投票率を下げたいのか?
そうやって政治を私たちから取り上げるのなら、わたしたちは抵抗する。私は一人でも抵抗する。
本ブログを通して批判を続ける。
気付いた読者の皆様と一緒に抵抗し続ける。
わかったか!