AIをとりまく環境は激変しているようだ。とくにプログラムの世界では環境変化が著しいと聞く。オフィスワークでもAIを使うのと使わないのとでは効率が全然違うのだとか。
こうしたことからAI失業というワードも出てきている。youtubeでもそうした関連動画がいくつもあるようだ。
以下はそうしたものの一つ。
しかし私は少々疑問に思っている。なぜか。以下にまとめた。
>windowsやオフィス機器は仕事を奪ったか
1995年発売のWindows95は仕事環境を劇的に変えた。プリンターなどオフィス事務機器により大幅な効率化が実現した。
それで失業者が増えたか。とんでもない。
かつては手書きで清書すれば済んだものが、今度はいくらでもきれいに文書作成できるとなって、また別の仕事が増えた。要求水準が変化しただけでホワイトカラーの仕事は減っていないように思える。
経営者も取引先も効率化によりさらに品質の良い仕事を求めるようになり、仕事ボリュームは減らない。
雇用されて働く側も職場や同業他社との競争を意識して仕事するため、仕事ボリュームは減らない。
経営者・労働者・取引先の三すくみでけん制し合うから仕事ボリュームは減らず、単純に失業が増える構造にならない。
>便利から標準へのパラダイム
現時点においてAIを効果的に使っているのは一部の層に限られる。
しかし劇的な効率化が目に見えるようになると、猫も杓子も導入せざるを得なくなる。
そうなると瞬間的には効率的だったかもしれない仕事様式が、あっという間に標準的な仕事様式に変容していく。
このスピードがあまりにも早いと、失業より先に導入と教育が必須になっていく。
結局はマンパワーの時代に戻っていく。失業は増えない。
>経営者は労働者を使い倒す構造は維持される
いくら技術が進歩しようが、経営者のマインドまでころっと変わったりはしない。
古代から植民地時代まで奴隷を使って経済を回してきた。その奴隷が蒸気機関やオフィス機器、産業機械に置き換わっていく。
経営者は労働者を最大限ドライブさせることでマネタイズする。
この是非はともかくとして、AIが導入されたとしてわざわざ手持ちの人材を放棄するだろうか。
少なくても日本の雇用環境では考えにくい。派遣労働が今の職場を維持できなくなる可能性はあるが、どこか別の職場で仕事を見つけるだろう。
仕事のマッチングの問題があるから絶対に失業がないとは言い切れないが、単純に失業が増えるとは言えない。
>少子高齢化による人手不足に対してAIはフォローできない
今、建設業、製造業、サービス業で人手不足だと言われる。そこを現在は外国人労働者で補っているが、ここをAIないし人型ロボットが代替するならばトータルで失業が増えることにならない。
またリンクの動画では言及していないが、人型ロボットがたとえば建設業や製造業で導入された場合、そのメンテナンスや運用管理する人間はどうするのか。
現在でも自動運転による公共交通が議論され、その実証実験も開始されているのはニュースで見るが、それが広く社会適応されていくという話はとんと聞かない。それはおそらく事故など予想外のことが起こった時の対応、責任所在など実質的な運用ないし法的課題等がクリアできないからだろう。
それが劇的に改善できるだろうか。良くも悪くも日本の政治は最新技術に疎いので、よほどうまく政治をコントロールしない限り、AIや人型ロボットが失業をプッシュするようには思えない。
これらを加味すると、AI失業とは言い切れないだろう。
これを支持する専門家は少なくない。
日経は「AIの普及は、向こう5年間で日本の失業率を押し上げるか」という質問を投げかけたが、「そう思う」10%に対して「そう思わない」36%という結果が示された。

AIの普及と日本経済|日経エコノミクスパネル 経済学の羅針盤:日本経済新聞
もしAI失業があるとするならば以下の条件が整った場合だけだろう。
- 人手不足を受けて労働時間の短縮を政府が主導、整備する
- AIによる仕事効率が付帯する業務も含めて全て完全にカバーする
- あらゆる領域に適用できる汎用性が確立される
- 技術に無理解な層も含めてAI普及による恩恵を享受できる
言い換えるならば、現在の人手不足の構造がAIに頼らず解消され、AI運用にあたっては付随する業務が発生せず、あらゆる業種・職種問わずに適用され、しかもAIを使いこなせない人も含めてAI普及によって生じるベネフィットをベーシックインカムのような形で受け取ることが出来る。
これらの条件がクリアできるなら、おそらくAI失業はあり得るだろうと思う。
あるいは単純に、「一方の業種は消えるが他方で付帯する業務ないし産業が発生する」といった場合でも、その瞬間的な業務喪失によって失業だと言えるのかもしれない。
この場合は8割失業というのは別の仕事を見つけることと同義なので、仕事のマッチングという問題はあるにせよ、仕事自体はなくならない。
非常に酷な言い方をさせてもらえば、AIを駆使しなくてはならないほどこき使われる可能性は高い。これまでの業務スタンスが通用しなくなるかもしれない。そこからドロップするとAI導入できないほど利益構造の薄い業種に職を求めるしかなくなるかもしれない。それはある。
メディアで「AI失業」という単語で浮ついたニュースを流しても、こういう深刻なシミュレーションはちっとも見当たらない。それは真剣に受け止めていない証拠だと思う。
つまりいつもの流行を追うニュースに過ぎず、まともに受け取る方がどうかしていると思うのだがどうか。あるいは勝手に不安を増強してビジネスチャンスにしたがってるだけとか。
あなたはどう思う? 真に不安になるほどAI失業があるとこの記事を読んでも思うだろうか。みんながみんなAIを使わないとダメな世界に入るなら、今度はAIをデザインする側がユーザ獲得競争になり、いうほど使える人・使えない人に二分されたりはしないと思うが、あなたはどういうビジョンを抱くだろうか。