事業所における安全第一は、それを真正面から否定する人はめったにいないにせよ、本当の意味で「第一」に掲げる人は意外と少数派だ。
安全対策のための安全衛生委員会はなれ合いで、新しく打ち出される安全対策は面倒で、生産性と対立した場合は優先順位を下げる。
読者のあなたの職場はどうか。思い当たるフシはないだろうか。
本エントリーでは経済合理性の観点から安全第一を確認する。
何かというと現場で労災が発生しないようにとか、コンプライアンスの観点からとか、ややもすると比較困難な価値基準を持ち出してきて混乱させることを一切避け、コスト優先の考え方で安全第一を再解釈する。
今の日本社会において安全第一を掲げる根拠にされるのは
- 労働災害の防止: 従業員の命や健康を守るため。
- 事業の持続性: 重大な事故による企業信用の失墜、操業停止、損害賠償リスクの回避。
- 生産性と品質の向上: 安全な環境は作業効率とモチベーションの向上に繋がる。
- 法的義務: 安全衛生法に基づき、事業主は労働災害を防止する義務がある。
等に整理できる。
現場でよく言われるのが「働いている人間がケガして痛い思いをするだろう」というやつだ。
他方で現場にいる人間はこうも思っているだろう。(でも安全のために生産性を落とすと文句を言うじゃないか)と。
ここがコンフリクトになっているのではないかと考える。
では次のように考えを整理してはどうか。
安全対策の土台になるリスクアセスメントでは、特定の危険の発生頻度と重篤度を数値化する。突起物のある閉所での作業は、目に突起物が接触する危険があり(頻度:2)、眼球負傷のリスクがある(重篤度:2)ため、かなり問題がある(リスク:4)といった塩梅だ。
これをもっと現場に落とし込んで解釈してしまえばよい。
たとえば突起物のある閉所作業が6か月に一回、眼球負傷は10回に1回あるとみなしたならば、5年に一回眼球負傷の労災が発生するとみなすことができる。
同様に労災発生のリスクを積み上げたとき、年間で何回の休業災害になるのか。
(実際は、こうしたリスクを軽減するため突起物に保護カバーをつける。作業員にゴーグルをつけさせるなどしてリスク低減を図るが、あくまで論点整理として)
安全軽視の考え方をする人たちは、どうも事故を軽く解釈しがちだが、労災が多発すると労基が動く。抜き打ちの査察があり、ひどい場合は事業停止命令が出る。
事業所は危険性の洗い出しを余儀なくされ、同時に具体的な安全対策が求められることになる。ここでは「注意して作業する」といった何の意味もない言葉での誤魔化しは一切通用しない。
場合によっては施設に安全のためのインフラ投資が要求されることになり、現場の職員の教育や保護具の準備などが急ピッチで進められることになる。
生産停止による損失と安全対策のためのコスト要求の可能性、これを無視してなお、安全第一より生産性が優先上位にくるとは言えないだろう。
安易な安全軽視は生産性を下げる。
問題はコンプラや人命尊重といった評価軸を変えた理由にあるのでもない。
安定的に生産性を維持するためにこそ安全第一が掲げられる。現場と管理の両方がこれを理解する必要がある。
