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小説「シャーロック・ホームズ対ドラキュラ:あるいは血まみれ伯爵の冒険」レビュー:設定はイロモノで中身はシャーロッキアンの原作1978年生まれの佳作

吸血鬼ドラキュラと対決するホームズのパスティーシュ。

同時代の異なる作品のキャラクターをぶつけるというアプローチの作品。いわゆるクロスオーバー。

今でこそ日本でもさまざまな作品が存在するが、この作品のアメリカ初版は1978年という作品。邦訳でも1992年。古い。

 

ちなみに同時代の実在・空想問わずに多数を取り込んだキム・ニューマン著「ドラキュラ紀元」の原作出版年は1992年。

同作の先輩とでもいうべき作品が「シャーロック・ホームズ対ドラキュラ―あるいは血まみれ伯爵の冒険」とも言えるだろう。

 

ヴィクトリア朝時代の有名人を同じストーリーに放り込むというユニークな作品というだけでなく、本書の体裁としてワトスン医師の隠された原稿というのも面白い。

だから著者はジョン・H・ワトスンで、編者がローレン・D・エスルマンということになっている。

いかにもシャーロッキアンが好みそうな仕掛けだ。

 

それだけではなく、小説「吸血鬼ドラキュラ」の骨子を織り込みつつ、物語上、どうしても整合性がつかない部分はわざわざ言い訳してくるあたり、念の入りように恐れ入る。

この辺、文化資本がないと「退屈」とか「わずらわしい」とかネガティブに評価されそうだが、本家のホームズ譚からして言い訳を重ねるので、むしろ「味わい」だろう。

 

作品の構造はこうだ。

小説「吸血鬼ドラキュラ」の時系列をベースに置く。

そこにホームズ譚としてワトスン医師の口述を敷き詰めていく。

あくまでホームズ譚の一つとして敵役をドラキュラに据えた作品として書かれる。

 

産業革命以降の科学的価値が支配的な世界、その科学捜査で著名なホームズという作品世界において、カビの生えたモンスターである吸血鬼。食い合わせが最高に悪い。

そこが序盤のもたつきに現れる。こっちは吸血鬼ドラキュラが吸血鬼だと思って読んでいるのに、それを全く信じないワトソンにやきもきさせられる。話の進み方が遅いこと遅いこと。

ホームズがその脅威をいち早く察知し、そして十分な検証の末に真実に到達、危機に直面することでワトスンが否応なしに現実に直面する。そこから話が一気に加速する。

 

そのテイストは「シャーロック・ホームズの冒険」に近い。

その極致がラスト。小説「吸血鬼ドラキュラ」が下地になっている以上、ドラキュラを滅ぼすのはヴァン・ヘルシング一行と決まっている。その着地まで「あれは教授が改変した」とやる度胸は、エスルマンにはなかったようだ。

ではどうなったか。それは未読の人に敬意を示して秘匿させてもらおう。

ミステリーにネタバレ厳禁。

 

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