わたしにとってのマリオは、固定画面で土管の中を行き来してハエやカメを退治するか(マリオブラザーズ)、スクロールする画面を右に進んでクッパを倒してピーチ姫を助けるか(スーパーマリオブラザーズ)、あるいは雪山の登頂を目指して進む上方向スクロール(アイスクライマー)。
有名なのは右方向に進むスーパーマリオブラザーズだろう。踏みつぶしてブロックの下から叩いてファイアーボールを投げて敵を倒す。ステージの最後にバナーを掲げたポールにタッチしてクリア。ピーチ姫は助けられる存在。マリオとルイージは色違いで性能に違いなし。
懐かしいドット画の世界にようこそ。
氷河期じじいにとってのマリオはそういう印象だが、すわ最新のマリオ映画はどうなっているんだろう。息子と一緒に鑑賞してきた。
映画が始まって驚いた。姫がつええ。星の姫のロゼッタは星のステッキを使った魔法で敵をやっつけるし、ピーチ姫もマリオに城を預けて自ら冒険に飛び出していく。これがDEI時代の女性キャラクターか。囚われの姫から一歩も二歩も進歩した存在。すげえすげえ。
他方でマリオとルイージもいけてる。登場シーンのイケてる乗り物アクションから、姫に恋する赤い配管工と、そんな兄を茶化す緑の配管工。こいつらそういうキャラクターだったのか。
序盤にこれらのアクションで映画ファンを惹きつけつつ、対象のお子様を取りこぼさない構造を持っている。短いエピソードをつないで全体をつなぐ。
最初、映画ってもっと上映時間いっぱいを使って多層的に構成するものだろうと思って苦々しい思いをしていたが、隣でスクリーンを真剣に観ている息子の姿にハッとした。
これは大人がターゲットの映画ではない。子どもにとって消化しやすいショートの話を単線でつないで全体を構成するつくりになっている。
ふつう、映画は短いエピソードを重ねるにしても多層的に重ねる。一つのエピソードが終わり切らないうちに次のエピソードが始まり、またエピソードを重ねるといった具合で多層的に語られる。
本作は違う。一つ一つを順に解決させ、それをリンクしていく。
一つ一つの話で脱線しても、また新しいエピソードで楽しめばよい。落ちこぼれを出さない親切設計。これはすごい。
そして往年のマリオファンに対する心配りもよい。
終盤、まるでクッパ城で待ち受けるトラップを切り抜け、橋の向こうに立ちふさがるクッパと対決、そういうスーパーマリオブラザーズでよくみた風景が広がる。
ここはまさにファミコン世代、雇用経済でいうところの氷河期世代ど真ん中に刺さるシーン。おもしろかった。
細かいところへツッコミ入れたくなることもないことはない。
だが、繰り返す。本作は大人をメインターゲットにした映画ではない。
言い方は悪いがマリオというキャラクターを前面に押し出した子ども向けないしファミリー向けの映画だ。
大人に振りすぎて子どもの反応が悪かったら意味がない。そういう意味では大人でも楽しいと思えるツボがいくつか用意されており退屈させない。良作。
ちなみに終盤でターミネーター2のラストを思わせるシーンがあり、わたしは鑑賞中、つい吹き出してしまった。息子は「え?」て顔してみてたが、あれこそ大人の映画ファンが喜ぶツボではないかと思う。
いくらかナメて鑑賞していたせいで、この手のツボの見逃しがあるかもしれない。そういう目線があれば、わりと集中して画面を見ていられると思う。
子どもと一緒に鑑賞するにはもってこいの、まさにゴールデンウィーク映画だ。
