テリーブルックス著「魔法の王国売ります!」の舞台、ランドオーヴァーに行ってみたい。
王様のメダルがあれば言語の壁を越えられる。スターリングシルバー城に入城し、えらそうなことを言う割に魔法が全然使えない宮廷魔術師のクエスター・スーズ、魔法で犬の姿になった宮廷書記のアバーナシィの二人と会い、やかましくも無害な言い争いを見てみたい。
あるいはコボルトのバニオン、パースニップを連れて王国を回ってみたい。犬の頭をした妖精で会話も通じないが、二人がいればよっぽどの危険も事前に排除してくれるはず。それがダメなら城の遠見台で見て回るか。

誰の治世かというのも大事だ。ベン・ホリデイ統治下ならましだろうが、それ以前の役立たずの王が統治する時代なら観光旅行なんか成立しなさそうだ。
そういうのも事前にわかるとありがたい。
まさか私自身が王に? 御冗談を。
こっちは魔女ナイトシェイドや古きドラゴンのストラボ、鉄のマルクといった脅威に直接対峙させられるのは勘弁願いたい。
小説ではハイクラス向けクリスマスカタログに載っていた100万ドルの王権にシカゴの弁護士ベン・ホリデイが食いつき、そしてさまざまな困難を乗り越えて王国再建していく物語だった。
彼は失った妻アニーの代わりに妖精ウィロウを見出し、価値ある挑戦としてランドオーヴァーに取り組んだ。
しかし私は妻は生きているし息子もいる。今ある生活を放り出してまで王国に永住したいわけじゃない。
王権に拘束されるならランドオーヴァーに行きたくはない。
そういうことならピアズ・アンソニー著魔法の国ザンス・シリーズのザンスがいいな。
木になる靴を履き、パイの実を食べる。この国、どういうわけかたいていのものが木になる。ドラゴン・ステーキの実などもおいしそうだ。
そんなだから商工業が発達せず、ファンタジー世界が維持できているのかもしれない。その辺も見聞できれば興味深い。
ただ、谷ドラゴンに高熱の蒸気を浴びせられたり、触手木につられて生きながら食われたり、ぴくぴく虫に貫通されたりっていうのは勘弁願いたい。
あの手の脅威は、物語の主人公は対抗できる力を持つが、ただの読者でしかない私は脅威に直接さらされてやすやすと命を落としそうだ。
してみると、ランドオーヴァーにせよ、ザンスにせよ、読書という形で訪れる方が穏便な気がする。
じゃあ、ほかに行ってみたい現実の国というと?
ちょっと思いつかない。具体的に名前を出すと今度は旅行プランや費用、宿泊先や移動手段の手配などが頭をちらついて楽しくなくなる。わたしはわが家で妻や息子、犬猫と一緒の方がいい。