ルパン三世というタイトルに惹かれて買ったはいいが、義務教育も終わってない語彙力により挫折、長らく読破できずに放ってあったのを高校生くらいになって発掘、読んだような記憶がある。

だいぶ古い。初版で1989年11月。
「エルドリア大脱出作戦」
「泥棒さんたちの華麗な休日」
の2本を収録。
前者は内戦による混乱の著しい中米エルドリアを舞台に、ルパンと銭形による脱出劇を描く。後者は誰も脱走できたことのない刑務所からの脱獄を描く。
後者はともかく前者はまるっきり泥棒関係なし。なんならルパンと銭形のバディ物といってもいいくらい。
漢字に悪戦苦闘し、文字量の少ない「泥棒さんたちの華麗な休日」を先に読んだような記憶がある。
すっごく軟派な話。脱出不可能とされた刑務所「パラダイス」に、ルパン・次元・五右衛門が挑む。挑むっていうか、骨休めっていうか、終わってみればチャンチャンって感じの話で、逆によく成立させているなと感心するほど。
冒頭から美女が迫ってくるセクシーな話で、ハイティーンの時分はドキドキして読んだような記憶があるような、ないような。
逆に「エルドリア大脱出作戦」の方は本当にハード。
漢字力でクリアできた時点で読んでも、あんまり話の筋が分かってなかったように思う。
今から読み返すと、話の筋自体はそんなに奇をてらったものではなく、ルパンと銭形によるバディ物になっている点が面白いといえば面白い。
しかし中身はおもしろいと単純に言えるようなものでもない。
架空の国エルドリアは中米に位置し、タカ派の大統領により国内の混乱が激化、政府軍にアメリカが支援していたが、不慮の事故によりアメリカが撤退、さらに混乱に拍車がかかるという情勢。
政府軍も反政府勢力もろくでもないっていう展開がまた救いがない。まあ、そうじゃなきゃ内戦なんてことにならないんだろうけど。
ゲストヒロインのマリアはゲリラ。
たまたまバスに乗り合わせたことから関わりを持つようになるが、彼女を通して内戦のエルドリアをみるとえげつない。
ルパンにとっても銭形にとってもエルドリアは外国だし、二人はなんだかんだでスーパーマンだ。ちょっとやそっとでは死なない負けない。彼らを中心にしては「内戦」がただの味付けになってしまう。
ところがマリアの視線を通してエルドリアをみると、政府軍は権力の象徴で人々を苦しめるが、反政府組織だっていうほどろくなものじゃないっていうのがよく伝わる。
内戦、そして中米となれば武器の密輸、そして麻薬。きれいごとじゃない世界が広がっている。
そんなに長い話でもないのに、内戦の悲惨さ、政府軍の立場、反政府組織の立場、それぞれを描いたうえでエンタメとして面白い。何度読んでも面白い。ちょっとご都合主義な感じがゼロとは言わないが、それでもちゃんとまとまりをもっている。佳い。
なにしろ強く打ち出されるのは、反戦のメッセージ。
この時代、ちゃんと武力が人々を苦しめるだけで救いの手段にならないことをエンタメの中でも描いているんだなと思った。ルパン三世という題材を使ってなお、そうしたメッセージが込められているというのは、ちょっと驚きでもある。
最近のエンタメは「反戦=ダサい」の図式なのか、武力をわりと肯定的に描きがちではないか。それをリアリティとして打ち出すから、余計にイヤになる。
作中はタバコがキーアイテムになるような時代を感じさせる。
しかし普遍的なものとして武力による支配と抵抗、つまり内戦とはどういうことか、これをルパン三世というフィルターを通して読める貴重な作品だと思う。
なかなか手に入らないとは思うけれど、もし図書館などで見かけたら一読をオススメする。