きのけんぶろぐ

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依存度の高さを無視して「脱中国」を言うなら、そのロードマップをどう描くのか政府自民党は見せてほしい

先日、自民党から出た発言にわたしは驚愕した。

記事も短いので、そのまま引用する。

 

自民・小野寺氏「早急に脱中国を」 軍民両用品輸出制限受け:時事ドットコム

  自民党の小野寺五典安全保障調査会長は25日、中国による軍民両用品の対日輸出制限を受け、レアアース(希土類)など重要鉱物の分野で「脱中国を早急に進めるべきだ」と訴えた。企業や独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)による備蓄積み増しの必要性も強調した。党本部で記者団に語った。

 小野寺氏は「防衛力強化の基盤となる産業に不当な圧力がかかることは決してあってはならない」と話した。 

 

「脱中国を早急に進めるべきだ」

「防衛力強化の基盤となる産業に不当な圧力がかかることは決してあってはならない」

 

いろいろとツッコミどころが多すぎてくらくらする。

 

わたしはすでに対中国において軍拡競争する無意味を主張した。

 

cinochenus.hatenablog.jp

主張の核は以下の通り

  • 現戦力に圧倒的な差
  • 日本も中国に劣らず周辺地域の緊張を招いている(フィアロンの理論)
  • 中国との経済関係を考えると関係悪化は得策でない
  • 実務上、軍拡は遅くて間に合わない
  • 実務上、軍事という非生産部門に振り分けるリソースがもったいない

 

これを書いた直後に自民党防衛族の発言だから、同党は安全保障が本当に分かってないんだと本気で心配になった。自民党ではなく日本の将来が。

 

中国側は日本(ないし在日米軍)を警戒している。極東アジアで対中包囲網に振り切っていく日米同盟を相手に、中国が安全保障を理由に経済的な制限をかけるのは妥当だ。

日本人の多くがそれを認識できないのは、あなたが悪いのではなく、日本政府と政府に追随する多くのマスコミがそういう側面をあなたの目の前から隠しているからだから仕方ない。仕方ないとは思うが注意深く見てほしい。さきほどの記事に加えて以下を補足するので、そもそも中国と対抗する段階にないことを確認してほしい。

 

レアアースも大事だが、日々の食料も大事。食えなくなったら経済も回せない。まず日本の食料自給率をチェックしよう。

農水省は食料自給率の推移をエクセルデータで公表している。自給率が低い(≒海外依存度が高い)項目は、「小麦」「大麦」「豆類(大豆)」「果実」「砂糖類」「油脂類」だ。

 

このうち「小麦」「大麦」「豆類」「砂糖類」は、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど、いわゆる友好国からの輸入が大半を占めている。

「果実」は含まれる品目が多く絞り切れないので本エントリーでは考慮しない。

残る「油脂類」が問題だ。

 

一般社団法人 日本植物油協会の「世界の植物油生産と貿易」によると、「大豆油」「菜種油」「ひまわり油」など13種が統計で整理されているという。

輸入量では「大豆油」「菜種油」「ひまわり油」の3種が上位にある。大豆油について同ページより引用する。

 大豆油は、世界最大の大豆生産国であるアメリカが同時に最大の大豆油生産国でもありましたが、最近では中国が膨大な大豆を輸入して搾油することとなり、アメリカを追い抜く存在となりました。以下、ブラジル、アルゼンチンと続き、上位5カ国で総生産量の8割弱を占めています。この内、アルゼンチンは、大豆より大豆油の輸出を優先する施策を取っていることから、過去において、ブラジルの生産量を上回ることもありました。 

 

同ページにある表によれば、最新データの2023/2024では大豆油全体が62百万トン、うち中国17百万トン、アメリカ12百万トン、ブラジル10百万トン、アルゼンチン7百万トンだ。中国がトップでシェア27%だ。

 

また農水省から出ている農林水産物輸出入概況(令和6年分)では、冷凍野菜における中国の割合が大きい(48.3%)。

 

さらに農業生産に肥料は欠かせないが、その原料はほぼ全量が輸入に頼っている。

肥料関係情報:農林水産省からチェックできる資料によると

主な化学肥料の原料である尿素、りん安(りん酸アンモニウム)、塩化加里(塩化カリウム)は、ほぼ全量を輸入。世界 的に資源が偏在しているため、輸入相手国も偏在。尿素はマレーシア及び中国、りん安は中国、塩化加里はカナダが主な輸 入相手国。

と指摘している。

 

リン酸アンモニウムの輸入国は中国がトップ

確かに令和2年から比較して令和5年で依存割合は減らしているが、それでもトップだ。それをこの数年で変化させられるかどうか。

 

ここまでいくつかのデータを示してきたが、食料自給率だけでは油脂類の輸入先、肥料原料の実態などは見えてこない。

それが先に述べた「日本人の多くがそれを認識できない」理由だ。フィクションの世界じゃあるまいし政府も意図的に隠したとは思わないが、だからといって国民が知りたがるであろうデータの関連をしなかったのは多少は作為的かもしれない。

 

わたしは上記のように示した。個人ブログで。あなたがこれ以上を知りたいのであれば、調べてほしい。あるいはコメントで気になる点について教えてほしい。可能な限り応じるつもりだ。

 

そして冒頭に戻ろう。こうした食料環境にあってもなお、日本は脱中国を言い続けるのが得策だろうか。あるいはこう言い換えてもいい。

「日本の脱中国は可能だろうか」

 

国民の胃袋を国外に預けたまま経済ないし軍事分野の不足を補うために戦闘的になる。その姿勢が国として、国民の生命や財産を守る立場から正当か否か。わたしには相当に疑問だ。

 

少し考えてみてほしい。日本の中国依存の高さは悪いことではない。経済的な結びつきがあるからこそ、中国は経済分野から外交カードを切ることが出来る。

そのカードを一枚、また一枚と切った末、経済カードがなくなった先、それはいよいよ軍事カードを切ってくる。「脱中国」を主張する人たちは、そういう未来図がお好みか?

なんでわざわざ自分から切れるカードを捨てにいく? わたしはそのナンセンスが理解できない。