きのけんぶろぐ

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軍拡を主張する愛国者殿、あなたは防衛白書やJETROレポートを読んでもなお主張し続けるのか

芸人が現職参院議員に安全保障分野で討論になり、芸人が議員を圧倒したのだというニュースがちらほら。

以前から中国脅威論を軸に日本の軍拡をプッシュする人たちはいた。それは右翼メディアの中にいる間は仕方ないと思っていたが、こうやって芸人が現職議員にふっかけるフェイズに入ってくると訂正が必要だなと思う。

ほんとうはその現職参院議員氏に見事なカウンターを食らわせてほしかったが、無理なら仕方ない。わたしはその芸人氏を場外乱闘的に何か言いたいわけではないけれど、軍拡は解決でないことは本エントリーで示したいと思う。

 

わたしは芸人氏の発言をつぶさに拾って反論することを目的としていない。

そうではなくて、対中国に軍拡で対抗すべしという主張全般に対して疑義を申し出る格好で進める。

軍拡だというが、まず現在地を確認しよう。

令和7年防衛白書のp38,39を示す。

 

日本の自衛隊と比較にならない中国軍規模

陸兵、艦艇、航空機いずれも中国軍が勝る

 

  陸上兵力(万人) 海上兵力(万トン(隻数)) 航空兵力(機数)
日本 13 53(139) 370
中国 96 237(690) 3,370

表.日中の兵力比較

 

現在地では比較にならない。この上、中国には長距離ミサイルがある。だから日本も長距離ミサイルを保有すべきという人、あなたは実際の軍事がゲームのようにボタン一つ、瞬間で整備されるとでも思っているのか。整備計画を立案している間に、これを挑発と判断して攻撃される。意味がない。

 

>戦争の発生要因(フィアロンの合理的戦争原因論)

どうして攻撃されるのか。フィアロンの合理的戦争原因論を示そう。以下の3つの要因により戦争が発生するとされる。

  1. 情報非対称の問題:相手国が圧倒的に強いとわかれば攻撃しないが、彼我の戦力差を過小判断した場合に攻撃する(ex.自衛隊TUEEE論)
  2. コミットメントの問題:不戦の約束が破られると想定される場合、攻撃要因となる(ex.専守防衛と集団的自衛権)
  3. 価値不可分の問題:領土もしくは政治的主張を「固有のもの」と相互に主張、妥結できない場合、攻撃の可能性がある(ex.尖閣、靖国問題)

 

例示がちょっと意地悪だったかもしれないが、わたしにはそう見えている。なぜ、そこで意固地に張り合おうとするのか。そうまでして守るべきことなのか。そこを譲らず敵対することで戦争要因になるのも是とできるほど強固な何かをお持ちなのか?

 

日本は専守防衛を価値と信じている人たちは多いだろう。しかし、その日本が近年、やたら合同軍事演習を行っていることはご存じか?

日豪加新4カ国が東シナ海で共同訓練 海自「まや」など参加し連携強化(11月14日)|Jディフェンスニュース(自衛隊・防衛省のニュース)

 

これはコミットメントの問題だ。こうした動きについて中国包囲網と判断されて周辺地域の緊張を高めているという発想は無理だろうか。

逆に考えてはどうか。中露が合同演習を繰り返す。北朝鮮も加わる。イランも参加する。旧共産勢力が続々と極東アジアにやってくる。やられて分かるだろう。これで危機感を感じないなら、あなたに語る言葉をわたしは持たない。非対称性という言葉の意味から理解してほしい。

 

付け加えて在日米軍はどうか。彼らのオペレーションを日本政府は関知することが出来ない。もしくは関知できたとしても関与することができない。これは情報非対称の問題になる。

その在日米軍の動きについて、中国は日本政府が無関係だと考えてくれるだろうか。それもちょっと虫がいい話ではないか。

 

>経済競争は決着、さらに先で負けている相手と戦う覚悟はありしや?

もはや経済で中国に勝っていると豪語する人はいないと思うが、一応、JETROレポートをリンクしておく。

 

2024年の日中貿易(前編)日本の対中輸出、3年連続減少 _ 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ

2024年の日中貿易(後編)日本の対中輸入、2年連続で減少 _ 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報 - ジェトロ

主要な対中輸入品目について、日本の輸入額全体に占める中国の構成比の変化をみると、衣類(第61類、第62類)や印刷機など(8443項)で低下が続いているほか、依然として中国が9割前後の構成比を占めるノートパソコン(847130号)や、スマートフォン(851713号)といった品目でも低下傾向がみられる。他方で、蓄電池(8507項)や自動車部品(8708項)などでは、中国の構成比が上昇している。 

蓄電池(8507項)や自動車部品(8708項)などでは、中国の構成比が上昇

 

「安くてすぐ壊れる」

これはネット通販で商品を買った印象だろう。そうではない。中国製品は日本の産業に欠かせないものになっている。

これが軍拡によって失われてもかまわないと?

まさか軍事衝突のさなかでも中国から輸入品が届くと思っているわけではないと信じたいが。直接の衝突がなかったにせよ、相手に握られた状況を分かってもなお、軍拡を主張し続けるのだろうか。そうなったら私にはもはやかける言葉がない。

 

>実務をイメージして生じる不具合

ここまでデータを確かめてもらってもなお軍拡を進めたいという方、あなたは強い。では実際に軍拡していくイメージをしてみよう。

先の項目でも述べたが、武器はネットで注文して明日届くというものではない。国会に諮って予算確保、発注、武器運用の人員教育、導入のための基地改修等々がある。

 

そう、たとえばF-35戦闘機。すばらしい性能の戦闘機。いいじゃないか。いいと思う。いいだろう。しかし100機以上をすべて納入し終わるのはいつだ?

導入のフェイズで実際に効果的な一打になるのかもしれない。でも、それが判明した時点で攻撃の理由を与えることになる。なぜか、F-35はステルス機だから。どう頑張っても防空のための武器とは言えない。迎撃ならステルス性能は必要ないからだ。

コミットメントの問題により攻撃トリガーを日本が引くことになる。

 

仮にトリガーを引かないにせよ、その急激な航空戦力増強は自衛隊全体のバランスを必ず崩す。予算と人員がとられる。

不足したら?

人はどうする。奨学金返済免除を条件に若者の入隊を勧めるのか? もうたいがい緩和した入隊年齢をさらに引き上げるのか? ようこそ勇ましいあなた。あなたの居場所も自衛隊にあるぞ!

金はどうする。GDP比2.0%への増額で不足とならばさらに増額するのか。そうでなくとも少子高齢化、増え続ける社会保障負担、停滞し続ける経済等々が問題となっているのに。あなたの政治関心は軍事以外には向いていないのか?

 

はっきり言ってしまおう。軍事部門はどこまでいっても非生産部門。国に豊かさをもたらす領域ではない。

それ以外に使えるリソースがあれば、そもそも軍拡せずとも緊張をそらすことはできるのではないか。

 

>わたしもあなたも平和国家を求めているのならば

「日本は平和の国だが中国の挑発が許せない」という。

わたしは別に中国の現状変更を許すつもりはない。ただ、それを軍拡で解決してほしいと思わないだけだ。

 

軍拡を唯一の手段のように煽っているやつはいないのか?

ほかに手段があるのに黙って煽っている連中、そいつらはかつて日本を戦争に誘導した連中と同じことをしている。そして、そいつらについていくのも同様だ。やめた方がいい。わたしはあなたが平和国家日本を望んでいると信じている。