きのけんぶろぐ

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映画「HELP/復讐島」レビュー:グロで返事しなくていいからサムライミ。やさしさを弱さと誤解する人に苦しむ全ての人にオススメ(ネタバレなし)

映画「HELP/復讐島」を劇場鑑賞。パワハラ上司と無人島で二人っきりというだけでゾクゾクするのにサム・ライミ監督。観る前からワクワクしてしまう。

結果、相当に面白かった。ちょっとした違和感を残しつつ、だからこそスッキリしきれないものを残してわたしの中を通過していった。

 

しかし世間的な評価はどうも芳しくないようで。少なくともレビューを見る限りは真価が伝わっていない気がする。

そこでわたしが好きだったところをあげて一人アゲアゲしていこうと思う。そんなエントリー。

 

www.20thcenturystudios.jp

劇場鑑賞前に情報収集で見ていたこの予告編がまた最高にキメてきている。

www.youtube.com

男「ボスは俺だ。指示に従え!」

女「ここはオフィスじゃないのよ」

このやり取りを見ただけで映画が相当に魅力的だと伝わってくるじゃないか。

 

>最初のオフィスシーンがかなりキツい

しかし無人島に二人っきりになるまでが相当につらい。

そこがなければ映画として成立しない以上、ここで徹底的にやる必要があるんだろうけど、まあ、女性がひどい目にあう。これ、パワハラ当事者だとフラッシュバックするんじゃないだろうか。

ピークは機内で女性がサバイバル番組に送った自己PR動画を、パワハラ上司が仲間内で笑いながら鑑賞するシーン。すぐ近くで彼女がいるのにゲラゲラ笑ってバカにする様子がまじくそ腹立つ。

 

そこから急転直下、要するに飛行機が落ちて遭難するわけだが。

ここでサム・ライミがドッキリちょいグロカットを挿入してくるのがまた、「おい、やってんな」となってしまう。これ、全編通してちょいちょい仕掛けてくる。

監督から「なあ、これだろ、これが欲しいんだろ?」という声が聞こえてきそうだ。わたしは別にそんなの求めてないから蛇足だと思ってしまったが。

 

とはいえ、わたしもサムライミだから観たいってほどのファンではない。

スパイダーマン旧3部作がサムライミだったのか。

あ、ダークマンもそうなのね、程度の人だ。

「死霊のはらわた」も観ていない。

そういうわけでサムライミ演出云々は正直、よくわからない。

しかしこの演出は観客向けのアピールなんだろうなと思ってしまった。あまりに唐突で。

 

>オフィスから解放された女性の自由よ素晴らしい

ともあれ遭難事故。無人島に二人っきり。

女性は趣味のアウトドア技術をいかんなく発揮してサバイバルする。

他方の男性は足を怪我していることもあり、無能だ。えらそうに指示するがピント外れ。

で、予告編のシーンに至る。ここが一つ目のカタルシス。ああ、気持ちがいい。お前と頓珍漢な上司面は、生きるか死ぬかフェイズじゃ役に立たないんだよ!

 

ところがしゅんとなって従順になったフリしているものの、すぐにえらそうを発揮して、またへこまされて。

何度も何度も男性が権力行使側に立とうとするのがおもしろくも飽きてくる。

そこへ仕掛けるのがサムライミ。ああ、そう出たか、と。

見事な逆転を入れてくるのが本当に残酷だ。単純なパワハラくそ上司をやっつけるストレスフリーに仕上げないところ、サムライミは本当に意地悪だ。

 

気になる未見の読者にネタバレしない程度にいうなら、「女性に肩入れできなくなる」がヒント。もうこれ以上は言わないよ。観て一緒に楽しもう。

ああ、しかしこれは見事。これぞ人生。これぞリアル。ははあ、なるほどねと思った。

 

それでも気になる?

じゃあ、以下の監督インタビューをどうぞ。

 

サム・ライミ監督、マーベル映画での“反省”を新作でリベンジ「才能を活かせていなかった」 - THR Japan

 

>白眉は中盤にやってくる

気になる方は読んでもらうとして、あんなのほとんどネタバレだろうと思うわたしは黙ってる。この鮮やかな仕掛けはよかった。観ている時点では納得できなかったが、こうやってレビューを書く段階になると理解できる。

とはいえ、素直に飲み込めるものでもない。映画のように一瞬を閉じ込めるエンタメは、その瞬間をきれいにパッケージしがちだが、現実はそうではない。簡単に割り切れない構造を持つ。それを映画に入れたのがすごい。すごいけど面倒くさい。この場合の「面倒くさい」は誉め言葉。でも面倒くさいよ!

 

そんなわけで映画のピークはラストではない。ラストに女性がいった

「自分の身は自分で守らなくちゃ」

も悪くはないが、ちょっと言い訳じみた気がしなくもない。

 

これよりストレートにわたしの中に残ったのは中盤のセリフ

「やさしさは弱さじゃない。誤解しないで」

の方だ。

オフィスでのパワハラの延長で何度も何度もイヤミをいう男性に女性が、とうとう言い放つ。

 

ああ、そうだよ、協力するのは服従しているからじゃない、それがサバイバルだからだ。あなた一人のベネフィットを成立させるためにわたしが存在しているわけじゃない。

コスパ・タイパで瞬間瞬間のベネフィットしか見ないのは一瞬一瞬の利益を最大化するが、ほんとうはそんなのは生存戦略としては間違っている。

続いていく関係で継続的に利益を出そうとするなら協力関係こそ必要なポイントで、瞬間瞬間で判断していてはダメなのだ。

 

これこそ昨今に響くメッセージだろう。

少なくてもわたしには強く響いた。

 

>本作にオススメの層

しかし…わたしが観た劇場環境では、私以外は30歳前後とみられるカップルだけ。それもどうやら女性がオススメしていたようだ。これがカップルにとって良い映画体験になったのかどうか。

だってパワハラ男性と復讐する女性の映画だ。デートで観て、あとからゲラゲラ笑えるほどの信頼関係があればいいけど。初デートでこれだと誤解しかねない。

まさか本作のことを本当に分かっててオススメしたんだろうか。だとしたら彼女は本作の彼女くらいキメてる女性だ。すごい。

 

ともあれ、どうせなら

・パワハラくそ上司に鬱屈した職場環境を強いられている人

・ありきたりな勧善懲悪に飽きた人

・今の時代にサムライミのグロでスプラッタな演出はもうだめかもと諦め半分の人

これらの人たちにオススメしたい。

 

非常に良い。2026年早々いい映画が鑑賞できた。

 

オフィシャルギャラリーから一枚。鑑賞後は違って見える