きのけんぶろぐ

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なぜ政治は私たちを政策でないものを使って誘導しようとするのか

この週末は衆院選。自民党の圧勝となった。この選挙にどんなかかわりが出来たか、それを各々が問うてみる必要があるだろう。

 

わたしが一番気になったのはメディアだ。選挙期間中、ずっと情勢を流してきた。あれは適切なのか。公示直前に結党の中道改革連合の最大獲得議席数を示して煽り、公示後は野合ではないかとやる。中盤以降は自民党有利を伝え、最終盤は大勢が決したかのように伝えた。

 

つまりメディアの伝え方いかんで選挙結果に影響を与えるのではないかという問題である。これをアナウンスメント効果、という。時間は巻き戻すことが出来ない。そのためメディアが伝えた場合・伝えなかった場合を単純比較できない。そのため絶対的に断言できないだけの話で、ほとんど確信的に影響を与えているのではないかと思う。

 

今回の選挙を我がこととして少し考えていただきたい。

たとえば自身の関与があってもなくても結果が変わらないと感じた場合、あなたは関与することを選ぶか。

あるいは関与することで結果が変わりそうだ。あなたにとって好ましい結果が求められそうだと伝えられた場合はどうか。

これを大っぴらにやっているのが日本の選挙報道ではないのか。

 

>報道による影響分析

選挙序盤、中道改革連合が比較第一党になる可能性が示唆された。

これにより各選挙陣営は以下の行動動機が与えられる。

  • 中道改革連合:周辺支持層の期待感、選対の危機感
  • 与党自民党:選対の警戒感、周辺支持層の諦観

序盤において選挙の実務を担う選対においては危機感や警戒感が広がる一方、移り気な支持層・無党派層は選挙へコミットする動機付けを遠ざける。結果が見えそうな選挙に関与するモチベーションを失っている状態だ。

 

中盤から終盤にかけては自民党有利、中道の議席大幅減が伝えられ始める。これにより以下の変化がもたらされる。

  • 中道改革連合:周辺支持層のあきらめ、選対の危機感
  • 与党自民党:選対による一層の引き締め、周辺支持層のバンドワゴン効果

中盤から終盤に入ると情勢をひっくり返すことは難しい。序盤から低い投票率への見込みがあった中、自分たちの票田へ一層の働きかけをすることで自民党はますます情勢を優位に進めることが出来た一方、中道改革連合にとっては挽回の手立てを打つことができなかった。

 

そもそもの話、今回の短期決戦はかなり水物で、中道改革連合の勝ち筋は序盤からの逃げ切り以外になかったのだが。

 

>アカデミズムによるアナウンスメント効果研究

アナウンスメント効果による選挙への影響に対する懸念は、最近になって言われるようになったものではない。「アナウンスメント効果 選挙」と検索すれば以下の論文がヒットする。

 

 cir.nii.ac.jp

 

論文によれば優勢報道によるバンドワゴン効果、劣勢報道によるアンダードッグ効果が論点整理されている。しかしこれだけでは変数が足りない。

 

わたしが指摘したように、有権者は選挙に等距離で接しているのではなく、支持層・無党派層の動向を予測して選対が反応することで有機的な変化が常に起こり続ける。

 

それを示すことができないアカデミズムに限界を感じる。同時に選挙介入の可能性について自浄作用を期待できないマスコミへも不満を抱く。

なにより主権者国民を誘導しておいて政治をクリーンなものであるように欺き続ける政界そのものに非常な怒りを感じる。

 

>なぜ政治ではなく政局ばかりが先行するのか

なぜ議席予想に終始するのか。ホースレース報道になってしまうのか。

材料がないわけではない。今回の衆院選の場合、高市氏はテレビの討論番組を選挙期間中の負傷を理由に欠席したが、健康上の理由と問題をスライドさせて政策議論を深めることを避けた。野党側のコメントとして「逃げたのではないか」と伝えながら、誠実に向き合うことを拒否した。

消費税減税のコピーをそのまま垂れ流し、その実、どういう結果となるか伝えることをしなかった。

 

こういうと技術的困難や視聴率獲得に利益がないことなどを言い出しそうだが、それは違うだろう。ホースレースでできることを政治でやらない言い訳には使えない。

たとえばオリンピックやワールド杯で、スポーツのルール解説や選手紹介、技術の評価ポイントなどを解説して視聴者にスポーツ理解を促すのはなぜだ。

できないわけではない。しないだけだ。案の定、選挙直後から争点解説するではないか。

 

スポーツ報道で掘り下げる情熱の1/3でも選挙報道に注いでほしい

 

わたしがマスコミと政治の不誠実さに怒りを感じるのは、その判定の段階にある時点では一切の情報を示さず、議会勢力図が確定してから情報公開とする点だ。

今回の選挙中、一部報道で「食料品の減税と同時に消費税率12%引き上げ」が伝えられたが、そのインパクトに対してあまりに低調。

また、わたしたちは別に消費税減税を求めているわけではない。手持ちの使えるお金を増やしたいのだ。物価高・賃金停滞の中で苦しんでいるのだ。そこに手当てしてほしいと考えているだけで、それは消費税減税による手段の固定を求めているのとは質的に全く異なる。

 

こんなことは私が指摘しなくても政治・メディアいずれも認識していることではないのか。それを無視してホースレース報道を展開した結果が今回の自民党圧勝なら、これはいかにも不誠実ではないか。私はこの点をまず不満に感じている。

 

>おわりに:理解はするが許せない

ただ理解はする。

アカデミズムはアナウンスメント効果について社会的意義のある研究だと認めたとしても、ホースレース報道した選挙・しなかった選挙を、それ以外の要素を等しくしたものとして分析することが困難だ。

またバンドワゴン効果・アンダードッグ効果というものはいかにもアドホックな解釈で、実際は選挙にかかわる人々のさまざまな思惑で変動し続ける多層的なものとして扱う必要があるだろう。

その研究困難さについては理解する。

 

メディアは、とくにマスコミは選挙結果が出た後に争点解説するのはやめていただきたい。その情報を選挙中に得ることが出来なかったことで主権者国民は常に不利益を被っている。

ただ、放送の権利を政府に握られている以上、強気に出ることのできない構造は理解できる。理解できるだけで許せることとは全く違うが。

報道の自由を盾に制限をかけようとする動きに対しては常に攻撃的になるメディアだが、それを言うならまずマスに対して誠実に伝え続ける姿勢を示してからではないか。今の選挙報道にその姿勢はない。

 

政治家は結局のところ当選が最大の関心事なのだろう。「落選すればただの人」などという言葉は、これを端的に示している。ゆえに掲げてきた基本政策をひっくり返しても選挙直前に合流する。選挙後に公約を反故にするといったことを繰り返すのだろう。

しかしそれが民主主義政治なのか。勝てば官軍で何をしてもいいのか。ずいぶんな話じゃないか。